ミズナは鍋野菜からサラダ野菜へ<br>時代の変化の中で生まれた「赤紫色」ミズナ

ミズナは鍋野菜からサラダ野菜へ
時代の変化の中で生まれた「赤紫色」ミズナ

ミズナをサラダで食べる。
今では当たり前になった楽しみ方ですが、実はミズナをサラダで食べるようになったのは1990年代後半から。
ドレッシングを販売する会社などの提案があって生まれた新しい食べ方といわれています。
この流れの中で生み出されたのが「紅法師」。
赤紫色のミズナ誕生の裏には「食べてくれる人を想う」熱い気持ちがありました。

開発者:井手さん

ハクサイやミズナなど、葉物野菜ならおまかせ。
入社当時から変わらず、冷静な中にも熱い思いがあふれるブリーダー。

先輩からタスキを受け継いで
発表まで20年以上の道のり

1990年代後半にはタキイでは「サラダでおいしく食べられ、美しい彩りを添えるミズナ」という開発計画が固まっていたものの2002年に一度ストップ。再始動する2009年まで約7年という歳月が流れました。
再始動するきっかけとなったのは「美しい彩り」を目指して選定した「赤紫色」が機能性成分のアントシアニンによることがわかったことでした。

再チャレンジを担当したのは当時入社2年目のブリーダー。
「任せてもらえることが嬉しく、張り切っていました」
と当時を振り返ります。

品種開発に携わる人間は、消費者よりも生産者との距離の方が近く、「作りやすさ」や「収量性」を重視する方向に傾きがちになることもありますが、井手さんが真っ先に考えたのは
「どうすれば食べる人に喜んで食べてもらえるか」
ということでした。

「開発担当者は野菜売り場に行けば、たくさんの野菜が並んでいても自分が開発を担当した品種はすぐわかりますが、私は、誰が見ても一目で違いがわかる、選んでもらえる品種を作りたいと思ったんです」
そこでこだわり抜いたのが色合いの美しさ。
これが大きな課題となりました。

色がきれいに出ない!!

品種開発に着手すると、発芽してすぐ赤紫の色が出るものと出ないものがあることがわかりました。そこでまずはトレイにたくさんのタネをまき、発芽してすぐの状態で「色合いが美しく」「葉の形、きれいな切れ込みが入ってミズナらしい」「茎の揃いが安定している」ものを選定するところから始まりました。

ある程度育った苗を植え替えてさらに生育を見守ります。
すると同じように育てているはずなのに発色に違いが出ることもわかってきました。
苗の段階ですでに色合いは確認して植え替えているはずなのになぜ…。
畑を歩き回り、きれいに発色するものとしないもの、その違いを見極めようとするうち、あることに気づきました。

外側に植えてあるもののほうがきれいに発色している!
日当たりには気を付けているつもりでしたが、ミズナの発色する条件には「風通し」もあることがわかった瞬間でした。
そこで植える列の間隔を通常よりも広げ、苗の間隔を広く取り、風が通るようにしたところ、大成功。
栽培方法の注意点もあわせて提案することで、美しい赤紫色をもつミズナ、「紅法師」の発表に至りました。

ブリーダーが発色にこだわったのは「食べる人に喜んでもらえる彩りの美しさ」「一目で違いのわかる色合い」ということもありますが、「紅法師」のもつ赤紫色こそが機能性成分アントシアニンによるものだったからです。
これまでのミズナにはあまり含まれていないこのアントシアニンこそが「紅法師」の特徴。この色がしっかり出てこそ「ファイトリッチ」の「紅法師」なのです。

食べてくれる人の近くへ

「『紅法師』の赤紫色は加熱調理をしても色抜けしにくい茎に色濃く出るように開発しています。葉に色をのせることも考えたのですが、そうすると鍋物にしたときに赤紫色が鍋の中に溶けだしてつゆが黒っぽく濁ってしまう。サラダで食べていただくことを想定して開発した品種ではありますが、食べてくださる方のさまざまな食べ方において、目でも楽しんで召し上がっていただけるように設計しました」

そう語るブリーダーの井手さんはデパートのお惣菜売り場などへ出向き、消費者と直接向き合う人々の声を聞きながら、「消費者に選んでもらえるアピールの仕方」まで考えたといいます。
 
そんなブリーダーおすすめの「紅法師」レシピはもちろんサラダ。
「サラダに最適なミズナとして開発したので、まずはサラダでそのおいしさを味わっていただきたいと思います。紫色の色素をもつカブなどと交配して生み出したミズナなので、やわらかく、従来のミズナのような筋っぽさが少なく、シャキシャキした心地よい食感を楽しんでいただけると思います。サラダのアクセントとなる『紅法師』の美しい赤紫色はレモンやお酢などの酸で色があざやかになりますので、ドレッシングに酸味のあるものをお使いいただくのもおすすめです」。

しかし実際には想定外の反応もあったそうです。
「私は『紅法師』の色こそがまず第一の特長だと思って、色が抜けてしまいやすい鍋物にはあまり向かないと考えていたのですが、食べていただいた方から『鍋物にいれるとすごくおいしい』という声をいただいています。食感のよさも楽しんでいただきたいので、鍋物で召し上がっていただく場合は食べる前にさっとお鍋にくぐらせるくらいでどうぞ」とのこと。

野菜売り場でも目を引く赤紫色のミズナ、「紅法師」。
「一目で違いがわかるミズナ」、ぜひ選んでいただけると嬉しいです。

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